脳腫瘍・症状・療法・種類

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原発性脳腫瘍・転移性脳腫瘍・症状・検査・療法・種類



     
§1 脳腫瘍とは


     脳腫瘍には原発性脳腫瘍と転移性の脳腫瘍があります。原発性脳腫瘍は頭蓋内の組織から発生したもので

     、転移性脳腫瘍は他臓器から転移浸潤したものですが、その比率は原発性の脳腫瘍のほうが、圧倒的に多

     い状況です。脳は人間の、人間であるための人格や、機能、情操、運動コントロールなどあらゆる重要機能を

     司る組織です。脳腫瘍により機能が障害されれば様々な症状が発現します。






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§2 脳腫瘍の症状


      
§2−1 頭蓋内圧亢進症状/脳腫瘍

      頭蓋内に異物が発生する事により頭蓋内圧が亢進します。それにより脳浮腫(腫瘍周辺の腫れ)や水頭

      症(髄液の流れを腫瘍が障害して起こる)なども併発することになれば、更に頭蓋内圧は亢進する事に

      なります。
           -頭蓋内圧亢進-
頭蓋内圧亢進の原因は、頭蓋内圧占拠性

病変(脳腫瘍、脳出血、硬膜外出血、脳

膿瘍)、脳浮腫と脳腫張(脳腫瘍や頭部

外傷などによる脳浮腫など)、髄液循環

障害(水頭症)、脳血液量の増加(静脈

洞閉塞症などによる脳内血液貯留など)

などが考えられます。頭蓋内圧亢進は初

期に頭痛、吐き気、嘔吐が起こります。

主に早朝、起床時に起こり易いようです

。(脳膜や血管への障害の影響と思われ

ます/morning headache)。


小児の場合は吐き戻す、頭痛などを訴える場合など注意を要します。症状が進行すれば大脳と小脳の間に

ある
テント下図もご覧下さい)など硬膜の隙間から脳が内圧亢進により押し出される脳ヘルニアという

命に関わる病態を起こします。そうなれば痙攣、意識もうろう、意識喪失など緊急事態になります。頭蓋

内圧の亢進状態を放置しますと、生命に危険を及ぼす事があります。








      
§2−2 局所症状/脳腫瘍


      
脳の障害される特定の部位に準じて特定の症状(右脳半球の視中枢/左同名性半盲・小脳/平衡感覚・片側手、

      足筋力低下など)が発現します。(
頭蓋内圧亢進により、眼底静脈が鬱血して鬱血乳頭なども出現します。)





      
§2−3 内分泌症状/脳腫瘍


      下垂体の細胞から腫瘍が発生しますとその程度により下垂体関連ホルモンの分泌異常がおこります。乳

      汁の分泌異常や、眉・顎の張り、手足の肥大など末端肥大症を起こしたり糖尿病や副腎皮質ホルモンの

      分泌障害などによりクッシング病を発症すれば肥満、にきび、高血圧、糖尿病なども発現します。その

      他小児に多い胚細胞腫、視床下部過誤腫など.刺激ホルモン分泌異常で髭、声変わりなどの二次性徴

      の発現などもあります。



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§3 脳腫瘍の検査


      CT・MRIで腫瘍の場所や腫瘍の程度、性状などを把握します。また生化学検査によっても確認します。


     
§4 脳腫瘍の療法


      
§4−1 脳腫瘍の外科療法


      手術箇所を拡大する顕微鏡手術、脳表面に端子を当てて腫瘍の箇所を特定する超音波や生理学的に神経

      機能モニタリングなどで腫瘍のみを摘出します。





      
§4−2 脳腫瘍の放射線療法


根治手術が不可能な場合は放射線療法が採用さ

れますが外科療法と併用する場合や、開頭手術

をせず化学療法と放射線療法の併用のケースも

ありますが、放射線療法の場合は正常な脳組織

にも放射線があたる事による脳の萎縮や壊死を

起こすため組織内照射により腫瘍に局所照射し

たり、コンピューター制御で限定照射を実施す

る事により効果をあげています。







      
§4−3 脳腫瘍の化学療法


      放射線に比較すると副作用は少ないといえますが吐き気、嘔吐、白血球減少、血小板減少、肝機能障害

      などの全身症状があります。薬剤の経口や静注などで投与されます。




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§4−4 脳腫瘍の免疫療法


      インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの多くの薬剤が使用されます。





      
§4−5 リハビリ/脳腫瘍


      治療後の大切なケアで最も重要です。辛いかも知れません。ですが神経系の機能障害、顔面麻痺、筋力

      低下、歩行障害があるかも知れませんがあきらめません。





      
§4−6 薬物療法/脳腫瘍


      レセプトを確実に守ります。痙攣を発症していれば抗痙攣薬が処方されておりますし、守らなければサ

      イド痙攣が悪化する事もあります。顔面麻痺があり、まぶたが完全に閉じる事が出来なければ角膜損傷

      を起こしますから守るための眼帯や環境への留意、点眼薬の指示通りの点眼をしなければなりませんね。





      
§4−7 維持療法/脳腫瘍


      化学療法、免疫療法で悪性腫瘍などの場合は再発防止の為に実践されることが有りますが、回復、治癒

      を信じて継続して行く事になるでしょう。腫瘍が完全消失となっても医師の指示に従い、定期的な通院

      による経過観察も必要です。一人で闘うのではなく、身近な家族や親族が援助、補助も大きな力になり

      ます。運動中枢、言語中枢、思考の中枢の刺激は血流を大きく改善し回復への大きな力になります。








     
§5 脳腫瘍の種類


原発性脳腫瘍発生頻度(成人)
神経膠腫(グリオーマ) 31%
髄膜腫 25%
下垂体腺腫 17%
悪性星細胞腫 15%
膠芽腫 11%
神経鞘腫 10%
頭蓋咽頭腫 04%
血管芽腫 03%
その他 05%
成人脳腫瘍では膠芽腫、悪性星細胞腫は悪性です。
-頭蓋内模式図-

原発性脳腫瘍発生頻度(小児)
神経膠腫(グリオーマ) 70%
星細胞腫 26%
髄芽腫 17%
頭蓋咽頭腫 12%
胚細胞腫 11%
上衣腫 09%
膠芽腫 05%
小児グリオーマは半数が良性、膠芽腫、髄芽腫は悪性です。
 転移性脳腫瘍
 脳への転移は男性では肺癌、消化器系の癌が多く、女性では乳癌、.の癌が多い。




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     §5 どんな脳腫瘍


     §5−1 神経膠腫(グリオーマ)/脳腫瘍


     神経細胞をささえる膠細胞系のもので、その神経細胞、膠細胞の腫瘍をグリオーマといいます。神経膠腫は脳の

     中にしみ込むように大きくなるため正常脳の境界が不鮮明で、手術で摘出しきることは困難なため放射線療法に

     よる再発防止のための治療が大切になります。近年での膠腫全体の5年生存率は38%程度といわれます。原発

     腫瘍の中でも頻度の高い、代表的腫瘍です。浸潤する性質を持つもので、根治の困難な腫瘍です。グリア細胞

     (脳細胞は神経細胞とグリア細胞 <神経細胞を支持し、助ける>  に分けられる。)由来と考えられるこの腫瘍

     (神経膠腫/グリオーマ)は、脳実質内から発生し、周囲組織に浸潤し発育する。年齢別では15歳以下の小児

     では、グリオーマが小児脳腫瘍全体の50%を占め、非常に多いが、膠芽腫、退形成性星細胞腫は18%程度で、

     比較的重篤なものは少ない。一方、70歳以上の高齢者では、グリオーマの中で膠芽腫と退形成性星細胞腫の

     2種類の占める割合が70%以上になり、悪性度の高いものが非常に高い率になっている。グリオーマは男性の

     方が若干多く、女性1に対し、男性1、2〜1、5になっています。要因として、遺伝的要因の他に、環境要因として

     電磁波、化学物質、感染、ホルモン等などが候補に挙がっています。グリオーマはその浸潤の性質上、腫瘍切除

     は腫瘍辺縁の、正常脳組織も含めた切除となり、また、その発現部位によっては、重要機能部位であれば、殊更

     重篤な後遺症を残す恐れもあります。





     
グリオーマの悪性度(病理学的分類)/脳腫瘍


星細胞腫瘍 astrocytic tumor
グレード1 上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma)
多形黄色星細胞腫(pleomorphic xanthoastrocytoma)
毛様細胞性星細胞腫(pilocytic astrocytoma)
グレード2 びまん性星細胞腫(diffuse astrocytoma)
グレード3 退形成性星細胞腫(anaplastic astrocytoma)
グレード4 膠芽腫(glioblastoma)
乏突起膠細胞系腫瘍 oligodendroglial tumor
グレード2 乏突起膠腫(oligodendroglioma)
グレード2 乏突起星細胞腫(oligo-astrocyotma)
グレード3 退形成性乏突起膠腫(anaplastic oligodendroglioma)
グレード3 退形成性乏突起星細胞腫(anaplastic oligo-astrocytooma)
上衣系腫瘍 ependymal tumor
グレード1 粘液乳頭状上衣腫(mixopapillary ependymoma)
グレード1 上衣下腫(subependymoma)
グレード2 上衣腫(ependymoma)
グレード3 退形成性上位腫(anaplastic ependymoma)
脈絡叢腫瘍 choroid plexus tumor
グレード1 脈絡叢乳頭腫(choroid plexus papilloma)
グレード3 脈絡叢癌(choroid plexus carcinoma)

     * 一般的にグレード1、2を良性、グレード3、4を悪性と呼んでいます。グレードが高くなるほど悪性度は

     増し、グレードが低い方から、高くなるにつれ高分化なものから、未分化なものへ並びます。(良性という位置

     付けでもこれは、本来の良性腫瘍ではなく、そのカテゴリーの中では比較的良性の経過をたどるという意味合い

     になります。







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§5−1−1 膠芽腫上図をご覧下さい/脳腫瘍


    
 脳腫瘍で最も悪性といわれ成人に多く脳内浸潤が著しい。また、急速に広がります。発生場所により障害に特

     徴があり、前頭葉や側頭様に出来れば判断力や知能、記憶障害、運動機能障害、言語麻痺などが発現し脳幹に

     発生すれば意識障害にもなります。脳腫瘍で最も悪性と考えられる膠芽腫の平均余命は1年半程度です。近年

     での5年生存率は6%程度といわれます。主として成人の大脳半球に好発します。グレード4に分類される悪性

     星細胞系腫瘍です。(全脳腫瘍の5%)治療成績も不満足なレベルです。






     §5−1−2 悪性星細胞腫/脳腫瘍


     悪性度は膠芽腫に比しやや低いとはいえ、平均余命は3年前後であり症状や状況は膠芽腫と類似する。成人に

     多く発生し、小児の脳幹(橋脳)にも発生します。これは橋グリオーマ(上図をご覧下さい)と呼ばれており

     、目を動かす神経麻痺、顔面神経麻痺、四肢運動障害などをおこします。膠芽腫に次ぐ悪性度と考えられる悪

     性星細胞腫では近年での5年生存率は23%程度といわれます。成人の大脳半球に好発します。全脳腫瘍の10%を

     占めグレード3に分類されるものです。治療成績は不満足なレベルです。






     §5−1−3 星細胞腫/脳腫瘍


     この脳腫瘍は良性で小児の小脳に出来るものが知られております。第四脳室が押しつぶされて髄液の流れが悪

     くなるので水痘症を発症し、脳圧の亢進や歩行障害などをおこします。良性ではあっても視神経や脳幹などの

     部位に出来ると摘出が難しいために予後が悪い場合があります。
近年での5年生存率は66%程度といわれます。



     §5−1−3−1 毛様細胞性星細胞腫/星細胞腫/脳腫瘍


     小児の小脳、視神経、脳幹などに好発する腫瘍で、周囲組織への浸潤は軽度であるとされ、全摘出による治癒が

     望める可能性もあります。


大きな嚢胞とその壁に、結節状の充実性腫瘍を

認めるもので、中には嚢胞を伴わないものもあ

ります。境界は一般的には明瞭であるため、全

摘出が出来れば、予後も良好です。残存腫瘍が

ある場合及び、再発に付いてはその治療法には

意見が分かれる部分があります。生存率は10

年〜20年で90〜100%となっております

が、非全摘出例で10年生存率は40〜60%

となっております。






     §5−1−3−2 びまん性星細胞腫/星細胞腫/脳腫瘍


     成人の大脳半球に発生する腫瘍です。好発年齢は25〜49歳で良性の星細胞腫に入るとされますが、浸潤性の

     発育を示し、悪性転化もあります。(退形成性星細胞腫、膠芽腫に組織型が変化し多くは死亡する。)臨床例が

     少なく、治療法が確立していません。現況での標準治療は、手術療法と放射線療法で、手術による全摘術により

     予後良好因子に貢献しているという報告例の多い現状では、全摘術が薦められております。但し、この腫瘍の性質

     上、浸潤性であるため、実際には、画像上の腫瘍範囲を越える腫瘍が存在している事が知られており、真の意味

     合いでの全摘出を行う困難性が指摘されております。従って、術後は放射線療法が選択されます。化学療法では

     現況では有効性を認める報告がありません。






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     §5−1−4 上衣腫上図をご覧下さい/脳腫瘍


     脳室の壁を覆う上衣細胞に出来る腫瘍で、小児の場合は第四脳室に確認されることが多く、星細胞腫、髄芽腫

     と類似しており良性、悪性があります。良性の場合は摘出術で治癒するとされますが、悪性の場合は術後放射

     線療法が必要になります。発生母地は脳室や髄液腔に接している事が多く、原発性脳腫瘍の9%(別資料1、2%)

     とわずかですが、5〜9歳の小児期に好発し、後頭蓋窩に多いなどの特徴的です。腫瘍は成長が緩やかなため、

     症状が発現し難く、発見されたときは脳室内に充満し、非交通性水頭症を合併している事が多い。(CTでは約半数

     に石灰化像を伴い、テント下では第四脳室に充満し、テント上では脳室周囲に膿胞を伴って確認される事が多い。)

     予後は腫瘍摘出率により強い相関を示します。即ち、全摘出例では5年生存率(92%)、10年生存率(83%)と予後

     良好で術後は経過観察となりますが、画像上腫瘍残存を認めた場合では、5年(22〜46%)、10年(0〜36%)と

     著しく低くなり、補助療法が必要になります。



     放射線療法は全摘出が不可能であった場合や、肉眼的に全摘出とされても、悪性部位の残存が認められた場合に

     採用されます。この悪性所見のある場合の生存率は5年(36%)、10年(30%)という報告があります。この場合

     には脳室に接する腫瘍であるため、髄膜播種の可能性があり、全脊髄追加照射も検討されます。但し放射線治療は

     3歳未満の乳幼児には放射線障害への配慮から、3歳を過ぎるまで選択されないのが原則です。(診断時年齢が

     0〜1歳と2歳では5年生存率が夫々25、7%と63、3%であり、その差が大きく、乳幼児に対して、照射線量の10%

     減での治療を検討する向きもあります。)



     化学療法ではシスプラチンを中心とした療法が反応が良いという報告があるが、治癒にまで至ったという報告は

     有りません。しかも、投与量は極めて高容量の投与となるため、高度の副作用に耐える事になります。






     §5−2 髄芽腫/脳腫瘍


     悪性腫瘍です。小児の脳室に確認されることが多く第四脳室で増殖するため水頭症や頭蓋内圧亢進症状を呈しま

     す。更に平衡感覚の障害による症状も発症します。摘出術後、放射線及び化学療法を併用します。5年生存率は

     60%程度です。小脳虫部に好発する、予後の悪い腫瘍でした。小脳症状と頭蓋内圧亢進症状を起こし、経過が

     短く、進行性です。治療は可能な限りの腫瘍摘出をし、その後放射線療法、化学療法を実施します。髄液播種を

     来たし、頭蓋内、脊髄腔内に転移する事もあります。




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     §5−3 髄膜腫上図をご覧下さい/脳腫瘍


     通常良性の腫瘍で脳膜から発生します。手術適応になりますが、技術を要する難しい手術になります。髄膜に

     ある、くも膜細胞から発生する良性の腫瘍で、形は球形あるいは半球形の事が多く、血管に富み、充実性で固く、

     被膜のある境界の明瞭な腫瘍です。増大まで時間がかかります。

        -大脳鎌近傍髄膜腫模式図-
女性に多く40〜50歳代がピークで

す。腫瘍が大きくなると発生部位によ

り脳・神経を圧迫して様々な症状を発

生するケースや、発生部位によっては

無症状のまま大きくなり、頭蓋内圧を

亢進し脳圧亢進症状を発症する場合も

あります。脳半球の上に発生して痙攣

を発症、前頭葉に発生して痴呆症状、

運動中枢に発生して発生した場所と反対側の四肢運動障害、視神経の走査する部位では視神経を圧迫し、

視野障害なども起こします。近年での5年生存率は93%程度といわれます。

            -蝶形骨近傍髄膜腫-
好発部位はほぼ決まっており、円蓋部、

大脳鎌、傍矢状洞、テントなどです。主

症状は脳の圧迫により発現するもので、

頭痛、発生場所によっては精神症状、麻

痺症状、失語、痙攣、知覚障害、視力視

野障害、嗅覚障害など様々な症状があり

ます。腫瘍を放置すれば、脳への圧迫が

次第に強くなり、頭蓋内圧亢進により、

生命に危険を及ぼします。CT、頭部X

線単純写真、脳血管撮影などで検査します。


腫瘍は急激に増大するものではありませんので、一刻を争うものでは有りませんが、腫瘍は確実に増大してゆく

ため、早期の治療の方が望ましいといえます。境界が明瞭ですので、手術による全摘が可能です。但し、その

発生部位によっては、手術が難しいため、後遺症の可能性があります。その様なケースの場合には、腫瘍の一部

を残し、後に放射線治療を行う事もあります。腫瘍は出血し易い性質が有りますので、術後の経過観察により、

頭蓋内出血、脳腫脹への注意が必要になります。痙攣発作も起こしやすく、長期にわたり抗痙攣薬の内服も必要

になります。全摘が出来れば、長期の生存も可能で、残存率が高ければ、それだけ再発率が高いとされます。

このように髄膜腫は綺麗にとりきることを目標にしますが、迅速診断で悪性髄膜腫なのか、悪性リンパ腫なのか

を迷う事例もある。この差は大きく、悪性リンパ腫なら手術切除は最小限として、後に化学療法や放射線療法を

施療する事になり、悪性髄膜腫は出来る限り、腫瘍を取りきるため長時間の手術となり、病理医の診断結果が

その先の手術の方向性を決める事になります。





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     §5−4 下垂体腺腫上図もご覧下さい/脳腫瘍


     下垂体から出来る良性の腫瘍で、乳汁分泌ホルモンを分泌する腫瘍、成長ホルモン産生腫瘍、副腎皮質ホルモン

     産生腫瘍のようにホルモンを異常分泌するものと異常分泌しない腫瘍があります。ホルモン分泌異常による症状

     は比較的早く発現しますので腫瘍も比較的早期に発見されます。
           -下垂体模式図-
一方ホルモンを異常分泌しない腫瘍の場合は

腫瘍が成長するにつれ、視神経を圧迫する事

や(両耳側半盲)、下垂体の機能を低下させ

る事により症状が発現します。寒さ、暑さが

こたえたり、疲れ易いなどがあれば注意が必

要になります。手術は鼻腔からの経蝶形骨洞

手術による顕微鏡手術となる事が多く乳汁分

泌ホルモンを分泌するプロラクチノーマの場

合、時に腫瘍が周辺組織内に浸潤している場

合があり、ホルモンの値が正常値まで至らな

い際には摘出術後、内服治療も追加されます。

近年での5年生存率は96%程度といわれます。30〜40歳代がピークと考えられております。治療は経蝶形

骨洞到達法手術による摘出が原則で、腺腫は全摘を目標とし、残存下垂体の保全も目標にします。開頭手術の

ケースもあります。残存腫瘍があれば、プロモクリプチン(主にプロラクチン産生腺腫・先端巨大症)の投与、

放射線治療を行います。不可欠なホルモンの欠乏をきたすようであれば、ホルモン補充療法も必要になります。







     
§5−4−1 ホルモン非産生腺腫/下垂体腺腫/脳腫瘍


     視交叉の圧迫により視野、視力に障害を受け(両耳側半盲)、頭蓋内圧迫が原因で頭痛をおこします。更に、

     下垂体前葉を圧迫する事により、下垂体前葉に脳低下症状も確認されます。





     
§5−4−2 ホルモン産生腺腫/下垂体腺腫/脳腫瘍


     @プロラクチン産生腺腫/無月経、乳汁分泌、不 妊の原因などを招きます。腺腫が増大しますと、頭痛、視野障害、

     視力障害、更には女性化乳房、.低下もみられます。



     A成長ホルモン産生腺腫/先端巨大症、巨人症、頭痛、視野障害、視力障害、.の低下、無月経、乳汁分泌、

     糖尿病などを合併し易い。



     B副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫/血中コルチゾンが増加し、中心性肥満、満月様顔貌、水牛様脂肪沈着、皮膚

     線条、多毛症、高血圧、糖尿、無月経、.低下、筋力低下、精神症状などがみられます。(クッシング病も御参考

     にご覧下さい)



     Cその他ホルモン産生腺腫/まれに甲状腺産生腺腫、.刺激ホルモン分泌腺腫があります。





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§5−5 転移性脳腫瘍/脳腫瘍


    
 胃癌や肺癌、乳癌などで脳に転移した腫瘍で(大脳半球の灰白質と白質の境界部に発生する事が多い)、転移に

     より脳が腫れを起こす脳浮腫を起こす事が特徴です。その30%は多発性で、境界部は明瞭です。頭痛、手足の

     運動障害、歩行障害、吐気、めまいなどの症状が発現します。






     
§5−5−1 転移性脳腫瘍の治療


     転移性脳腫瘍ではガンマーナイフなどの定位放射線照射が有効とされ、201個のコバルト60線癌(アイソトープ)

     を半球状に並べ、細いビームを一点に集中させその精度は0.5o以下で癌病巣だけを照射します。近年での5年

     生存率は13%程度といわれます。原発巣に再発が見られず、脳以外に転移巣が認められなければ、手術による

     摘出、その後の放射線療法、化学療法を行います。原発巣が進行性である場合、多発性である場合、脳深部の場

     合は放射線療法や化学療法のみの場合もあります。
肺癌や乳癌は脳に転移し易い癌として知られておりますが、

     この部位に癌が発見された場合、脳に転移している可能性を考え、転移を防ぐための放射線照射をする事があり

     ます。特に小細胞肺癌では考慮されます。





     
§5−5−1−1 手術療法/転移性脳腫瘍


     原発癌の成長が止まっている、縮小している場合で、他の臓器には転移がない事、患者さんの体力が手術に耐え

     られると考えられる場合には、脳内の癌病巣の摘出が検討されることもあります。その場合には、脳への転移が

     1個で、その手術は脳に深刻な機能低下を起こさないと、予想できる部位にある事も大切な条件です。その場合

     には放射線の全脳照射を併用する事もあります。





     
§5−5−1−2 ラジオサージェリー(定位照射)/転移性脳腫瘍


     頭の周辺から放射線を腫瘍に集中照射し、脳の正常な部分には最小限の料に抑える方法で、定位照射のやり方

     により、ガンマナイフ、ライナックナイフ(リニアックナイフ)、サイバーナイフなどという呼称で呼ばれます。

     この定位照射の場合は、転移癌の数が10個以内で、夫々の大きさは直径3cm以内(2.5p以下が望ましい)の

     時に、選択されます。再発防止のために、全脳照射併用もあります。副作用として、小さいとはいえ、照射後、脳が

     腫れる、壊死を起こす、癌が出血するなどの報告があります。脳の正常部分の壊死に対しましては、その部位の

     治療が必要になることもあります。



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§5−5−1−3 全脳照射/転移性脳腫瘍


     腫瘍の数が多いときや、腫瘍の大きさが大きい時には脳全体に放射線を当てるこの方法がとられることがありま

     す。脱毛や2日酔いのような症状があらわれます。一回の放射線の量が多い場合には、認知障害が起こる恐れ

     があります。





     
§5−5−1−4 化学療法/転移性脳腫瘍


     原発癌に使用された抗癌剤や、脳内に入り易い(血液脳関門)ニトロソウレア剤を含む、多剤併用療法が選択

     されます。転移性脳腫瘍の場合には、癌細胞が血管の血液脳関門を壊したり、血管壁を溶かして転移を引き起

     こすと考えられ、その故に、抗癌剤が脳内に入って効果を示すケースもあるものと考えられております。





     
§5−5−1−5 対症療法/転移性脳腫瘍


     多くの治療に対して延命効果が期待できないと判断される場合には対症療法が選択されます。患者さんの病状が

     悪化しているなどのために、それらの治療によりかえって、患者さんの重い副作用や、余命を短くしてしまう恐れが

     有ると考えられる場合などに、ステイロイド薬と利尿薬を使って脳の腫れやむくみなどを抑えるようにします。







     
§5−6 聴神経鞘腫/脳腫瘍


     一般的に脳組織の外側にできる腫瘍は良性の腫瘍で聴神経鞘腫も良性です。耳鳴り、難聴などで発症する耳に通

     じる聴神経の根元近辺から発生します。早期に発見できれば聴力も保全されたままで腫瘍を摘出する事も可能に

     なります。一方発見が遅れれば隣接する小脳、顔面神経、三叉神経などを侵し、歩行障害や顔面麻痺、知覚障害

     が発現します。CT、MRIなどで容易に診断でき近年での5年生存率は神経鞘腫の場合、97%程度といわれます。

     聴神経鞘腫は腫瘍の大きさにより、症状が異なる。その発現は聴力障害(98%)、耳鳴り(70%)、平衡障害(67%)、

     頭痛(32%)、顔面痺れ(29%)、顔面運動麻痺(10%)、複視(10%)、悪心/吐気・嘔吐(9%)耳痛(9%)、味覚

     障害(6%)となっており、聴力障害(電話が聞き取り難い)、耳鳴り(通常、高音性)がかなり多い。検査は耳科的な

     検査(聴力テスト、聴性脳幹反応)やMRI,CT、脳血管撮影などが行われます。治療は全摘出が原則で、殆どは

     全摘可能ですが、周囲組織との癒着が強ければ亜全摘術にとどめます。他に顔面神経の温存、聴力の温存が目標

     とされます。術後には一時的な顔面神経麻痺を起こしやすいとされ、回復は障害の程度に応じ1〜6ヶ月が必要と

     されております。聴力温存に付いては、繊細な蝸牛神経という事から、有効聴力温存率は50%程度とされており

     ます。ガンマナイフなどの放射線療法も用いられます。3cm以下の腫瘍であれば、有効とされております。

     (治療後6〜12ヶ月程度で効果がみられ、長期有効率<腫瘍の成長呈しor縮小>は95%以上、顔面神経機能温存

     率は90%、聴力温存率は50%程度とされております。)術後は髄液漏、顔面神経麻痺に対する管理が必要になり

     ます。




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§5−7 頭蓋咽頭腫/脳腫瘍


     下垂体の収まるトルコ鞍の上側に出来る腫瘍で下垂体機能障害や視力、視野障害、尿崩症などが発現します。こ

     の部分は視床下部とよばれる部位で重要機能を司るために悪性腫瘍と考えられていましたが診断、治療技術の向

     上により治療成績も大きく向上しております。小児に好発します。腫瘍が下垂体を圧迫するため、成長ホルモン

     の分泌障害により、低身長症、.発育不全をもおこします。腫瘍が増大する事により、脳脊髄液の通過障害を

     起こし、水頭症をもおこします。(治療は手術による全摘が原則ですが、視床下部などの周囲組織を損傷せずに

     全摘するのは、困難である事が多いとされます。無理な全摘手術は術後に尿崩症、意識障害なども起こす事が

     あり、全摘困難と判断されれば、放射線療法を追加する事もあります。術後のホルモン療法が必要な場合もあり

     ます。)





     
§5−8 胚細胞腫上図をご覧下さい/脳腫瘍


     この脳腫瘍は頭蓋咽頭腫と同様の位置にも出来、その場合は頭蓋咽頭腫と同様の症状を発症します。発生部位は

     大脳の底面後方の松果体にできる場合と下垂体上部の場合が多く、.刺激ホルモンを分泌による二次性徴を示

     す事もあります。胚細胞腫はジャーミノウマ(最多)、奇形腫(良性、摘出術)、胎児癌(極めて悪性)、絨毛

     上皮腫(極めて悪性)、卵黄嚢腫瘍(極めて悪性)があります。化学療法の有効性が近年判明しているため治療

     成績も著しく向上しています。







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